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海底モーニング王国(ソニン)  (ログ容量 : 609,117 バイト)
 
01: ソニン  2003/09/05(Fri) 16:30
000
 気分しだいで
     せめないで
(矢口まみり編)

矢口まみり 私立ハロハロ学園に通う、
ぶりっ子、トランジスターグラマー

矢口つんく 街の発明家、夢遊病者

モーニング娘っ子 不良 矢口まみりの同
         級生

ダンデスピーク矢口 矢口家で飼っている三
          百年間生きている猿

ゴジラ松井くん 落ちこぼればかり集めた
ハロハロ学園のヒーロー、
ハロハロ学園内の不良女たちにモテモテ

富家多恭子  ゴジラ松井くんの母親。むかし、矢口つんくと恋愛関係にあった。

警視庁刑事 王沙汰春
むかしナボナのコマーシャルをやっていた。
正論を言うが誰からも相手にされない。
この男の同類で長縞重尾というのがいるが、
この男の名前が出てくると今だに涙ぐむ馬鹿がいる。
馬鹿の代表(狂言役者、徳光ぶす夫、ぶすを演ずるのが得意)
 
483: ソニン  2003/12/12(Fri) 12:42
470
「なんだなり、あれは」
まみりは紺野さんの方を見て絶句した。
「酔拳(スイチェン)」
はるら先生は感動したように言った。
紺野さんは今は薄汚れた体育のジャージ姿になっている。しかし、ただのジャージ姿ではない、
腰にはチャンピオンベルトが巻かれている。
「紺野さんは環太平洋王者になったなり」
「まみりちゃん、あれはチャンピオンベルトじゃないわ、よく、見て」
まみりがよく見ると、そのベルトのバックルのところには風車がついていた。
妖魔剣聖紺野さんは酔拳の動きを止めると、今度は太極拳のような動きを始めた。
すると、不思議なことがおこった。ベルトの風車が回転を始めたのである。
「とうーーぉぅ、べしべし」
紺野さんは力強く、叫ぶとほぼ垂直に上方にジャンプした。そして、ふたたび、
ゴジラ松井の野球帽のてっぺんに飛び乗ったのである。
メルカトル図法とか、地球の姿を平面に現そうとすると、幾何学的な工夫を必要とする。
メロンやすいかを六等分にしたとき、鋭角となる切り口が出来る。その外皮は平面に近くなる。
逆に言えば、そんな平面的なすいかの皮を接着すると球という立体が出来る。その一番鋭角の
ところを寄せ集めた点がある。地球で言えば、北極や南極にあたる、野球帽でも同じである。
そこにボタンのようなものがついている。
紺野さんはそのボタンに異常な執着を見せていた。巨大なゴジラ松井の頭部に飛び乗った
紺野さんはそのボタンをとろうとした。
 
484: ソニン  2003/12/12(Fri) 12:43
471
「うきききき、べしべし」
紺野さんは両手でそのボタンをもぎとろうとした。ゴジラ松井は怒った。
小刻みに首を左右に振る。すると、たまらず紺野さんは振り飛ばされて、
峻厳な岩にたたきつけられた。紺野さんは脳しんとうを起こしたらしく、
首を振る。ゴジラ松井はその岩に突進していった。やはり、ゴジラ松井の得意技は頭突きだった。
間一髪のところで、紺野さんは空中に飛び上がると、二頭身のゴジラ松井の頭部は巨岩に追突して、
岩は砕けた。
「紺野さんでも、あの頭突きをくらったら、ひとたまりもないわ」
探偵高橋愛も絶叫する。紺野さんは次の岩に飛び移った。
また、ゴジラ松井は頭を振りながら紺野さんを巨岩もろとも粉みじんにしようとして突進してきた。
今度は紺野さんはするりとその突進をよけるとラー大王の下に潜り込むと、大王の足のさきをつかんだ。
見物をしていた妖怪子分百千騎たちがいっせいに手を叩いた。
「あれはなんなり」
まみりは絶叫した。
「紺野さんの得意技のひとつ、ジャイアントスイング」
妖怪に詳しいはるら先生はまなたぽつりと言った。紺野さんがゴジラ松井の足を引っ張ったので、
今度はゴジラ松井が倒れて、すごい地響きがした。
「ぴー、ぴー、べしべしべし」
紺野さんはゴジラ松井の足をとると回転し始めた。
「ひとーつ」
「ふたーつ」
「みーつ」
ゴジラ松井が回転するたびにビジャーノたちは数を数えた。
「とぅぉぅ、べしべし」
紺野さんが手を放すとゴジラ松井は飛んで行き、落ちたとき、東京でも震度五の地震が観測された。
 倒れている紺野さんの肘のところにはサポーターが巻かれていた。紺野さんはサポーターの
位置を手直しした。
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485: ソニン  2003/12/15(Mon) 16:14
472
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「もっと、紺野さんはジャイアントスイングをすればいいのよ、たった三回転だけでは、
あの恐怖大王がダメージを受けるわけがないなり」
まみりが見ていると、ゴジラ松井は起きあがろうとしている。まみりがそう思って横を
ちらりと見ると横では、安部なつみ先生がめがねをかけて、プロレス評論家になっていた。
まるで安部なつみ先生は力道山からはじめて、日本の草創期のプロレスを全部見ているようだった。
「あれこそ、よく練られた妖怪総大将の作戦よ、まるで、あの一戦を見るようだわ」
まみりの横にいる吉澤は嵐の夜に馬小屋で馬の赤ちゃんが産まれてくる様子や、
見たこともない大恐竜の目玉が原因不明のウィルスによって、腐って落ちていく
様子を見ているような、貴重なものを見ているような気持ちになった。
妖魔剣聖紺野さんは血と汗で汚れた肘のサポーターをちょうど肘の中心に来るようにしている。
そして、ゴジラ松井の様子をじっと見ていた。闘士は無意識に対戦相手に正対しようとする、
倒れても、すぐ起きあがって、相手の位置と状態を確認しようとする。
 ゴジラ松井も生涯の最大のライバル、紺野さんの姿を見つけようと立ち上がろうとした。
そのときである、紺野さんはまるで加速度そのもののようにゴジラ松井に突進して行った。
紺野さんの右肘は伝家の宝刀となっていた。
「紺野さんはよく考えている。もし、ゴジラ松井が立ったままだったら、ジャンプして、
ゴジラ松井の頸椎部に紺野スペシャルラリアートをお見舞いしなければならない、しかし、
両足が地面についていないために、その破壊力は半減する。それで身長差をカバーするために、
紺野さんはジャイアントスイングでゴジラ松井を倒したのよ」
 
486: ソニン  2003/12/15(Mon) 16:16
473
「安部先生、わたしはアンドレア・ジヤイアントとスタン・ハンセンが
戦ったときのことを思い出しました。スタン・ハンセンのウェスタン・ラリアットが
二メートル十センチのアンドレア・ジャイアントにきかないので、スタン・ハンセンは
ジャイアントをリング上に落としたのです、そしてリングサイドからウエスタン・ラリアトを
うったのです、それに状況が似ていることを安部先生は言っているんですね」
「そうよ、ああ、紺野さんの右肘がゴジラ松井の首を刈ろうとしている」
紺野さんの紺野スペシャルラリアットは起きあがろうとしている、ゴジラ松井の首をめがけて、
走っていった。そのときである、見るからに悲惨でかつ無惨な映像が広がったのは。海の方から、
無数の海亀が飛んで来て、紺野さんの右肘をめがけて衝突した。海亀の甲良は紺野さんの肘によって、
破壊され、見てはいけないものが砂浜に広がった。それは甲良の破壊された大量の海亀の死体である。
そして、海の方から幽霊のような者たちが現れた。
「海底大王、ラー大王、ゴジラ松井はラー八世、」
「海底大王、ラー大王、ゴジラ松井は背番号五十五」
「海底大王、ラー大王、ゴジラ松井は石川とやっちゃった」
「海底大王、ラー大王、ゴジラ松井は府下田恭子の息子だ」
海の方に数え切れない亡霊が現れた。その亡霊たちは半魚人の姿をしている。
海底帝国ラーの海の藻屑となった海底原人の霊だった。
まるで超音波攻撃を受けているように妖魔剣聖紺野さんは両耳に手を覆って、
その亡霊たちの怨念の言葉を聞かないように、もがき苦しんだ。
そのとき、紺野さんは背後から唇をミルク飲み人形のようにせばめたゴジラ松井くんが
近づいて来ていることを知らなかった。
 
487: ソニン  2003/12/15(Mon) 16:17
474
「ピエーーーーーー」
紺野さんは悲鳴をあげた。
「ピエーーーーーーー」
ゴジラ松井の牛一頭さえ、握り殺すほどの両手は妖怪総大将の側頭部を押さえ、
背後から抱きついたゴジラ松井は紺野さんの後頭部に錐もみのように尖った唇を
押し当てると肺や横隔膜の全機能を使って、紺野さんの後頭部を吸い続けた。
紺野さんの脳の圧力は低下していく、紺野さんは意識が朦朧としてきた。
海からは半魚人の亡霊たちがゴジラ松井を称える歌を歌った。
「ゴーゴーゴー、海底大王、ラー大王、ゴジラ松井はラー八世」
「ゴーゴーゴー、海底大王、ラー大王、ゴジラ松井はゴーゴーゴー」
「ゴーゴーゴー、海底大王、ラー大王、ゴジラ松井はノンフライ麺」
「ゴーゴーゴー、海底大王、ラー大王、ゴジラ松井は石川とやっちゃった」
「ゴーゴーゴー、海底大王、ラー大王、ゴジラ松井の得意技、バックチュウチュウ責め」
「ピェーーーーーー、ピェェェェェェェェ」
紺野さんの悲鳴は続いている。
「あれが、噂のバックチュウチュウ責めだわ、相手の後頭部から脳内圧力を下げ、
最後には死んでしまうか、発狂してしまうわざだわ」
安部なつみ先生は目を丸くして、足をばたばたさせている紺野さんを冷静な目で見つめていた。
ハロハロ学園の連中もこれがまるで自然の摂理でもあるかのように冷静にこの様子を見ている。
「ぴぇーーーーー、ぴぇーーーーー」
 
488: ソニン  2003/12/15(Mon) 16:19
475
紺野さんの絶叫は続いていた。
そのとき、絶叫にも似た、大量の泣き声が石川の砂浜にこだました。
「死んじゃ、やだ、やだ、紺野さん、われらが妖怪総大将」
「死んじゃ、やだ、やだ、紺野さん、あなたは、おれたちの太陽だ」
「死んじゃ、やだ、やだ、紺野さん、紺野さんを殺したら、神様に復讐だ」
「死んじゃ、やだ、やだ、紺野さん、あなたは僕らのふるさとだ」
今まで、気楽に芝居見物をしていたような妖怪子分百千騎たちは手に持っていた、
コーラーやポテトチップスや、塩入り豆を投げ出すと、やられている紺野さんのまわりに
集まってくると、紺野さんを称える歌を歌い始めた。ぬらりひょん、モモンガ、百目鬼、
青蜥蜴大将、山姥、ぬえ、・・・・数え切れない妖怪子分百千騎たちが、抗議のプラカードを
あげながら、泣きながら、紺野さんを称えていた。
「反則だ、レフリー、反則をとれ、」
「松井、くたばれ、松井、死ね」
「妖怪総大将、がんばれ」
「紺野さん、はやく勝て、ほうとうを食いに行こう」
「神様」
「紺野さん」
妖怪子分百千騎たちは天を仰いだ。
「ちゅう、ちゅう」
ゴジラ松井は妖怪子分百千騎たちを馬鹿にしたように紺野さんの後頭部を吸引し続けた。
「ぴぇぇぇぇ、ぴぇぇぇぇぇぇ・・・・・」
紺野さんの悲鳴も小さくなっていった。
ハロハロ学園の連中はわれ関せずという態度で、この様子を見ていた。
あの雷雨の暗雲に隙間が出来て、黄金色の光がもれて来た。
「あれは」
座敷わらしが天を指さし、妖怪語で叫んだ。
黄金の光の帯から、あの伝説のプロレスラーが舞い降りて来たのである。
宇宙犬、ムーンドックメイン。
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489: ソニン  2003/12/17(Wed) 14:46
476
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 むかし、マジソンスクェアーガーデンで活躍したプロレスラーである。髪は金髪、
そして口のまわりに石川五右衛門のように生えている口ひげも金髪である。
 まるで、チヤウチャウ犬のよう容貌をしていて、その出自は宇宙家族ロビンソンに
飼われていた犬が人の姿を手に入れ、ニューヨークに出現したと自分では言っていた。
女好きペドロ・モラレスと人気を二分した、プロレスラーである、いや、貧乏なため、
靴も買えずに裸足で戦った、アルゼンチン・バックブリーカーの創始者、
アントニオ・ロッカと人気を三分したと言った方がよいだろうか。
その宇宙犬が昇天して、プロレスの神となった。
このブロレスの神が天上に現れたことで、妖怪子分百千騎たちの意気は一気に上がった。
妖怪子分たちは紺野さんと同じようなピロピロ剣を天上に掲げると、ときの声を上げた。

それからピロピロ剣をお互いにまじ合わせると、かけ声を掛け合った。そして、
妖獣ゴジラ松井にバックチュウチュウ責めをかけられている紺野さんのまわりを円陣を組み、
お互いに肩を抱き合った。そして、ビックウェーブ、妖怪たちの作る人波が紺野さんと
ゴジラ松井の組み合っている場所を中心にして、うねり始めた。
座敷わらしも鬼猿も人面鬼も、大首も水虎も塗り壁も歌を歌い始めた。
ラララララ、紺野さんはひとりじゃないの、みんな、みんな、一緒だよ。
妖怪たちは紺野さんが、大好きだよ。
みんなはピロピロ剣でつながっているよ。
 
490: ソニン  2003/12/17(Wed) 14:48
477
冷たい道場の床を、水拭き、一緒にしたこともあったね。
でも、そのあとで、暖かいお汁粉を一緒に食べたんだね。
冷酷鬼ゴジラ松井のチュウチュウ攻撃はまだ続いていた。
紺野さんは遠くなる意識の中で、まだピロピロ剣の極意を会得する前のことを思い出していた。
パパとママが殺され、古井戸の中に投げ込まれ、沢庵石の下敷きになった紺野さんはようようの思いで、
古井戸の外に出ると、悪魔の住む森を抜けて、町に行った。
町はすっかり寝静まっていた。その町の片隅にフラメンコギターを持った黒髪の三十前後の男がいた。
「なにも、言わないでいいよ、きみの名前は紺野さんと言うんだろう。
きみにこのフラメンコギターをあげよう、このギターを弾きながら歌を歌えば、
みんなはいくらでもお金をくれるよ。でも、ただじゃだめだよ、きみのポケットに何が入っている」
そこで、紺野さんはポケットの中を探ってみると、中にはかけたビスケットが入っていた。
紺野さんはその男にビスケットを差し出すと、かわりにギターくれた。
紺野さんは男の言ったことが本当なのだろうかと思い、
テラスにブーゲンビリアの花が飾られている家の下に行き、ギターを弾きながら、
歌を歌った。すると、突然、冷たい水が降ってきた。
「うるさい、野良猫、うちの赤ちゃんが目を覚ますだろう」
今度は立派な看板のある商店の前でギターを弾くとまた、頭から水が降ってきた。
「うるさい、どぶネズミ、こちとら、帝国銀行に納めるお金の勘定をしているんだ」
どこへ行っても同じことだった。
 
491: ソニン  2003/12/17(Wed) 14:49
478
そこで、町の公園に行くと、ひとりベンチにぽつんと座り、ギターを弾いてみた。
すると、見たこともない生き物が一匹、ぽつんと紺野さんのギターを聞いている。
「あなたは」
「座敷わらしと言います」
それから次次と妖怪たちが紺野さんの前に現れた。
ぬらりひょん、かまいたち、ももんがじじい、百目鬼、ぶるぶる、かまきり仙人、・・・・・
人間界で用無しと言われ、追放された妖魔大王に友達が出来た。
「紺野さん、わたしたちを子分にしてください、紺野さんのためなら、
みんな命を捨てる覚悟が出来ています」
妖怪たちの言葉を紺野さんは夢の中の言葉のように聞いていた。
紺野さんは恋いをする気持ちはこんなものではないだろうかと思った。
夢ならばいつまでも覚めないで欲しいと思った。
 バックチュウチュウ責めによって紺野さんを発狂寸前にまで追い込んでいると思った
ワルゴジラ松井は薄気味悪い、気持ちがした。見ると、失神していると思った、
紺野さんが夢見ているように薄ら笑いを浮かべている。
そして、ときどき痙攣しているように紺野さんの足はピクピクしと動く。
ワルゴジラ松井はさらに紺野さんの後頭部をちゅうちゅうと吸う力を強めた。
 妖怪子分百千騎たちは紺野さんのまわりに円陣を組み、肩を組み合い、ウェーブを作り、
紺野さんを称える歌を歌い続けている。
 ひとりじゃないの、紺野さん、剣にかけたいのちはひとつ、
われらが妖怪大将、生きるも死ぬもいつも一緒だよ。
 剣を通した友情だ、紺野さんと妖怪たちは友達同士。
 
492: ソニン  2003/12/17(Wed) 14:50
479
 ワルゴジラ松井は薄気味悪いものを感じた。そのうち、宇宙犬、ムーンドッグメインは
地上に降りてくる。しかしゴジラ松井はまだ紺野さんの後頭部をがっちりとつかんでいる。
 プロレスの神様となったムーンドッグメインは天国で、達磨大師に出会った。
達磨大師は少林寺の開祖である。その僧たちが盗賊や兵士から身を守るために鍛錬の方法を伝えた。
少林寺拳法である。達磨大師は鉄指拳をムーンドッグメインに授けた。
その拳を身につけたものは五センチの鉄板にも穴を開けることも出来る。
それは指先を鉄よりも強くし、その鍛錬法は焼けた砂の中に指を指すのである。
地上に降り立った宇宙犬はワルゴジラ松井の頭のそばに降り立つと額に鉄指拳を打った。
一秒間に五回ものムーンドッグメインの鉄よりも固い指が降りてくる。
アッチョー、ビビビビヒビヒ。
ワルゴジラ松井はムーンドッグメインを追い払おうとして片手を払った。
そこにすきが出来た、
紺野さんはワルゴジラ松井の残っている方の手の人差し指をつかむと、両足を絡めて、
ワルゴジラ松井の人差し指を逆間接に決めた。
ワルゴジラ松井の全身に激痛が走った。
「一指し指固め、逆十字」
生まれながらに格闘家になるべくして生まれた、天性のレスラーの神技を見た安部なつみ先生は
感動して、叫んだ、
紺野さんはワルゴジラ松井の人差し指を蛸が絡んでいるように足をからめて、
両手で全力でゴジラ松井の人差し指のさきを引っ張っている。
紺野さんが背筋を全部、使って引っ張ると、
ワルゴジラ松井は
「グギャアー」
とうめいた。そのあいだもムーンドッグメインが鉄指拳をワルゴジラ松井の額に加えている。
妖怪子分たちは手に汗を握った。
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493: ソニン  2003/12/18(Thu) 17:36
480
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 びびびびひびーーーー、びびびびびーー
今度は海の方から、不穏な空気が広がって、
海底帝国の亡霊たちが抗議の声を上げている。
「反則だーーーーー。紺野さんの反則をとれ、レフリー、今、すぐ、ブレイクさせろ。
紺野さん、やめろ、ラー松井王子をはなせ、ばか、ばか、紺野、ばか」
海の方に浮かんでいる半魚人たちの亡霊が、紺野さんに憎悪の念を込めて、非難している。
そのあいだも、宇宙犬はワルゴジラ松井の額に鉄指拳を加え、紺野さんはワルゴジラ松井の
人差し指を逆にとると、身体をそらせるようにして、力を加えた。
「ウギャャャャ」
この技をかけられて、海底帝国大王は閉口した。そして、少しづつ体勢を立て直すと、
中腰になって立ち上がった。ワルゴジラ松井はまだ、とられていない左の拳を力を込めて、
握ると、鉄の拳を作った。このワルゴジラ松井の拳は、一発で海上を航行しているタンカーを
真っ二つに折ることが出来た。そして、寝技をかけている紺野さんの方を向いている。
「やっぱり、紺野さんの技は反則だなり、プロレスでは、相手の指を一本だけとるのは反則だなり」
「まみり、わたしも同じ、見解だわ、変なところでまみりと意見があったわね」
「あなたたち、どっちの見方なの、ゴジラ松井の指一本でも、紺野さんの腰回りよりも大きいのよ
、したがって、反則は成立しないわ」
安部なつみ先生が断定した。
 
494: ソニン  2003/12/18(Thu) 17:37
481
ワルゴジラ松井は中腰で立つと、紺野さんに地対空ミサイルほどの威力のある、
大きなおむすび拳骨を見せて威嚇した。紺野さんはまだ、ワルゴジラ松井の人差し指をとると、
懸命にこらえている。
その様子を見て、海の方で観戦している、亡霊たちが狂喜した。紺野さんは
ワルゴジラ松井の拳骨ひとつで死んでしまうのに違いない、
鉢巻きをしめて、その上に片手にガラス瓶に入った牛乳瓶を掲げると、
その闘いのまわりをマラソンを始めた。その中にはいつのまにか、参加したのか、
王警部も、新庄芋、徳光ぶす夫、神官新垣、くーちゃん、ほーちゃん、村野先生も参加して、
同じような格好をして、その示威行為に参加している。
そして、まぼろしのハロハロ学園のピロピロ剣道部の部歌を歌っている。
 剣の道はひとりじゃないよ、僕らには紺野さんがいる。さあ、さあ、進め、
一緒に行こう、紺野さん、紺野さん、女だてらに剣に命をかけた、紺野さん、紺野さん、
僕らの名主将、紺野さん。
 この歌を聴きながら、保険の先生の安部なつみ先生は涙ぐんでいる。
「馬鹿みたいなり」
「右に同意」
ワルゴジラ松井派のまみりも石川もあからさまに馬鹿にしたような態度をとった。
「なにを言っているの」
 
495: ソニン  2003/12/18(Thu) 17:38
482
安部先生は猛烈に抗議した。
「あなたたちは、ハロハロ学園、ピロピロ剣道部のことを何も知らないでしょう」
そう言えば、ハロハロ学園のすみっこの方にぼろい部室があって、そこにピロピロ剣道部というのが、
あったような気がする。
ハロハロ学園教務部には認可されない、部だったとまみりは思い出した。
そのピロピロ剣道部を作ったのは紺野さんである。
その部室は前は体育倉庫に使われていた。教務部の承認を得ていない部だから、
ハロハロ学園からは一銭も出なかった。
部員の募集をしてもひとりも部員は来なかった。いや、部員でその部室はあふれていた。
妖怪子分百千騎たちである。それでも、その部の中は活気にあふれていて、いつも、
小手、面、胴というかけ声が聞こえていた。そして、夕方には鍋の煮えるにおいがして、
何か、わけのわからないものを紺野さんと妖怪子分百千騎は食べているようだった。
文字通り彼らは青春をピロピロ剣にかけているようだった。
 しかし、ハロハロ学園の生徒たちからは、全く興味も持たれてもいなかったし、
重きも置かれていなかった。自分たちだけで、ほとんど自己満足だと言ってもいい状態で
やっていたのである。
 しかし、保険の安部先生はひとりだけ、このクラブを暖かい目を持って見ていた。
 そんな落ちこぼれクラブにある日、人間の生徒がひとりだけやって来たのである。
それが、焼酎のピロピロ飲みを得意にしている、松村財閥のひとり息子、松村邦宏だった。
ぼろい部室のドアを開けると、妖魔剣聖紺野さんが立ち、その背後には妖怪子分百千騎たちが控えていた。
「僕も入れてください。剣道をしたいんです」
 
496: ソニン  2003/12/18(Thu) 17:39
483
「なんで、ほかのクラブに入らないんだ、妖怪妖怪」
ぬらりひょんが妖怪語で尋ねた。
「お前みたいな、でぶで運動音痴の奴は入れないって言うんです。僕はあいつらを見返してやりたい」
静かにその様子を静かに見ていた、紺野さんは、ただ、べしとだけつぶやいた。
 そして妖怪たちと妖怪総大将紺野さん、そして落ちこぼれの松村邦宏たちだけの
ピロピロ剣道部は剣を道を究めようとクラブ活動に励んだのよ。剣の道のさきに何か、
あるかと思って、その頃の様子を思い出すように、安部なつみ先生は懐かしげに言った。
 しかし、松村邦宏くんの家はそのことを許さなかった。
財閥、松村家の跡取りとして、家庭教師を十人も雇って勉強をやらせていたの、
そんなことをして、何になる、松村家では松村邦宏くんを叱責したの。
「ピロピロ剣道部は素晴らしいんだよ、今度の地区大会に出れば、そのことがわかるよ」
邦宏くんは親の前でたんかを切ったのよ。
そして、部長の紺野さんにそのことを言ったの、背後では妖怪子分百千騎たちがその言葉を聞いていた。
今まで、ピロピロ剣道部は地区大会にも出たことはなかったの。
「出るべし」
妖怪総大将は地区大会に出ることにしたの。
「妖怪大将、着る胴衣も防具もない、妖怪、妖怪」
ぬらりひょんが妖怪語で妖怪総大将に言ったのよ。
だって、ピロピロ剣道部の部員たちは裸で竹刀を持って剣の練習をしていたからよ。
そこで地区大会に出るために胴衣や防具を買わなければならなかった。
松村財閥は邦宏くんに一銭もあげなかったから。
そこで、みんなは牛乳配達のアルバイトをして、部費を集めたの。
 
497: ソニン  2003/12/18(Thu) 17:40
484
そして。妖魔県政紺野さんは試合に出て、優勝したの。
そのときのことを忘れないように、苦しいときはピロピロ剣道部のみんなは、
野球帽を被って、鉢巻きをして、ときの声を上げるのよ。安部先生の説明で少し、
わかった。まみりはそれで、その中に松村邦宏もいるのかと思った。
「がんばれ、がんばれ、紺野さん、われらの妖怪総大将」
たしかに、その中に松村邦宏も歌を歌っている。
ワルゴジラ松井はその巨大な拳骨をぶるぶるとてふるわせると、今度は紺野さんの上に振り下ろした。
あぶない、紺野さん、
思わず、安部先生も声を上げた。
「イテェーーーー」
意外だった、声を上げたのは、ワルゴジラ松井の方だった。
そのしびれと痛さから逃れるために、打った拳の方を振っている。
紺野さんは異常なほどの石頭だった。
電光石火のようにワルゴジラ松井の片側に飛んで行った紺野さんは今度は
ワルゴジラ松井の人差し指と中指をとると、それを組み合わせて、
また、地べたを両手で叩いた。
「指四の字固め」
安部なつみ先生は感嘆したようにつぶやいた。
宇宙犬はうるさがられているのもわからずにワルゴジラ松井の額を
指でさかんにつついている。
「ゴジラ松井のスタミナは大部、失われているのに違いない」
**********************************************
****
 
498: ソニン  2003/12/21(Sun) 16:06
485
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 まみりが見ると、ワルゴジラ松井くんの口からは青白い、ひんやりするような煙が出て、
ゆらゆらと空中に上がって行くと、その毒煙を吸った、カムチャッカ半島に向かって
いる中型の渡り鳥の一団が海面に落下して行った。ワルゴジラ松井は首を回転させると、
妖魔剣聖紺野さんの方を見て、じろりと睨んだ。そして、腕をばだばたさせると、
地面が揺れ、土埃が沸き上がった。
「ゴジラ松井は余っている方の手で、紺野さんにパンチを浴びせるかもしれない、
そうでなければ、つま先キックで紺野さんに蹴りを入れるかもしれない」
保険の安部先生が心配気に眼前の試合の様子を語った。
「その心配はないわ。見てご覧んなさい、ワルゴジラ松井の残った片手や、両足を」
ワルゴジラ松井の四肢には大変な負荷がかかっていた。妖怪子分百千騎や王警部、
新庄芋、徳光ぶす夫、神官新垣、くーちゃん、ほーちゃん、村野先生、等々が必死に
なってワルゴジラ松井が動かないように押さえている。ただ、ワルゴジラ松井の
左手だけは紺野さんが人差し指四の字固めを決めている。左手だけは紺野さんひとりで
押さえているが、紺野さんはまるでブラックホールのように、数万トンの重量があったので、
カール・ゴッチがキーロックをかけられたまま、アントニオ猪木を場外に出したようにはいかなかった。
]それでも、ワルゴジラ松井のパワーの前に、妖怪子分たちも紺野さんたちも
地面から小刻みに浮かび上がったりしていた。
「でも、このままでは、決してゴジラ松井は自主するなんてことはないでしょう」
安部先生が冷や汗をかきながら、この様子を見ていると、のこのこと
ワルゴジラ松井の頭部に近づいて行く人間がいる。
 
499: ソニン  2003/12/21(Sun) 16:07
486
「つんくパパ」
安部なつみ先生はつぶやいた。
「いい格好だな、ワルゴジラ松井」
宇宙犬は鉄指拳をワルゴジラの頭部に撃つことにあきたのか、
やせるつぼに漢方の針を打っている。
「まみりのパパとして、言おう。まいったか、兜を脱ぐか、そして刑務所に入って、
まみりと結婚するか、さあ、決断しろ、ワルゴジラ松井、そして、この僕をお父さんと呼ぶのだ」
すると、ワルゴジラ松井の目玉は飛び出して、とろりとした体液とともに、地べたに落ちた。
「うきゃゃゃゃゃゃあぁぁぁぁぁ」
つんくパパは見せ物のキングコングが都会の中のサーカスのテントの中の檻の中に入っていて、
たまたま鉄の戸の鍵がかかっていることを知らずに、キングコングが飛び出して
来て逃げまどう観客のように、脱兎のごとく、井川はるら先生たちのいる場所まで戻って来た。
「全然、反省してませんよ。あいつ、まだ、お父さんなんて呼ばせられませんよ」
「心配なく、つんくパパ、ラー海底帝国大王は高圧力の深海の中で日常生活をしています、
この地上では循環器系に支障が出て、長時間はいられないはずです。
それより、あなたがつれて来た、猿はどうしたんです」
「ああ、ダンデスピークですか」
海岸での、決闘に心を奪われていたつんくパパは矢口家の主である、
三百年間生き続けている白猿、ダンデスピーク矢口の姿を探すと、
木製のテーブルの前で何か、食っている。テーブルを囲んで、飯田たち、
不良グループもいる、松井家のご両親が気をきかせて、取った出前の寿司をぱくついていた。
不良グループの横にはビジャーノ仮面たちの銀ラメのマスクも覆っている。
「不良たちは、紺野さんの勝利を確信しているみたいね」
 
500: ソニン  2003/12/21(Sun) 16:08
487
はるら先生は猿と一緒に寿司をつまんでいる、飯田や保田や加護や辻や
小川たちを見ながらつぶやいた。
たしかに、ワルゴジラ松井は大部、スタミナを失っているようだった。
「あれは、なに」
安部なつみ先生が空を見て叫んだ。
そこには巨人が、巨大なジェット飛行装置を背中に積んだ、ワルゴジラ松井が飛んできた。
その巨大な影で、つんくパパたちのいる場所は昼間なのに夜のように暗くなった。そして、
ちょうど、真上に来たとき、腐った臭いが広がって、空中から巨大な肉のかたまりが墜ちてきた。
それはちょうど、出前の寿司を食っている不良たちの真上あたりだった。
危険を察知した不良たちは口にも、手にも、大とろや、筋子や、河童巻きや、
ぼたん海老や、小鰭を持って、その場を逃れたが、
ダンデスピーク矢口だけは卵焼きをほおばっていたので、
もろにその空中からの落下物に押しつぶされた。
つんくパパは自分の家の家宝が視界から消えたので、あわてて、その場に走って行った。
「ダンデスピーク、ダンデスピーク」
空中では何かわからなかったが、それは古代獣の腐乱した死体だった。
その落下物の中から老猿が瀕死の状態で這い出てきた。つんくパパは老猿を抱きしめた。
また、空中を低く周回している巨人の背から何か、聞こえた。
「みんな、聞こえるか、降伏しなさい、この地上はすべて、ラー帝国のものである」
「あっ、あれは」
 
501: ソニン  2003/12/21(Sun) 16:09
488
巨人の背に乗っているものは、生き別れになって、死んだと思っていた府下田恭子ちゃんではないか。
「恭子ちゃん、なぜ、どうしたんだ」
つんくパパの視線とラー帝国皇后、府下田恭子の視線は空中でぶっかった。
紺野さんにすっかりとスタミナを奪われた、ワルゴジラ松井は、
すっかりとグロッキーになって、つんくパパの作った鉄格子の中につながれていたが、
自分の母親が来たことを知って、やはり空中を見上げた。
「母上、どうなされたというのです。この闘いはわたしひとりのもの、助太刀などいりませぬ」
「うわはははははは、試合はどんな方法を使っても勝てばいいのです。
秀喜。妖魔剣聖紺野とやら、地上でわが息子に勝ったことはほめて進ぜよう、
しかし、空中ではどうかな、これはわが息子の遺伝子をそつくり、
使って作ったコピーワルゴジラ松井なのです、そして、
さらにワルゴジラの戦闘能力を上げるためにジェット推進装置を背中につけたのです、
ふはははははははは。妖魔剣聖紺野とやら、このワルゴジラコピーに勝ってから、
午後のティタイムにするのだね、あははははははははは」
「恭子ちゃん、きみはなんで、そんな恐ろしい、女になったんだ」
「うるさい、つんくパパ、わたしがどうして、こんな女になったのか、
自分自身にきいてみろ、まだ、腐敗した古代獣の死体はいっぱいあるんだからね、
もうひとつ、お見舞いしようか」
捕らわれの身となったワルゴジラ松井は鉄格子を握りながら、叫んだ。
「恭子皇后、ラー帝国は妖魔剣聖紺野さんに負けました。われわれは素直に敗北を認めるべきです」
「うるさい、秀喜、この決闘、まだ、負けていないよ。
地球はみんなラー帝国のものだよ。うわははははははは」
 
502: ソニン  2003/12/21(Sun) 16:10
489
すると沖の方でこの試合のワルゴジラ松井を応援している半魚人の
亡霊たちの喜びの声が挙がった。
紺野さんも妖怪子分百千騎たちも怒り狂った。そして、マサイ人の狩りの踊りのように
垂直跳びを繰り返している。しかし妖魔剣聖紺野さんは空を飛ぶことは出来ない、
妖怪子分百千騎の中には空を飛ぶ妖怪がいることはいる。むささび鬼や、火車や、
鬼火や、烏天狗や、木霊など、数え上げたら切りがないだろう。
紺野さんの手足となって空中を飛ぶという方法があるかも知れない。
しかし、紺野さんは数万トンの重さがある。紺野さんの重さを支えて
空中に上がることなど不可能である。
「紺野とやら、悔しかったら、ここまで来てみろ、さあ、神官新垣たちを返して貰おうか、
地球はすべて海底帝国となるのだ。うわははははははははは」
 紺野さんは自分の足が地面から離れているのを感じた。紺野さんはうしろを振り返った。
すると、南方系の顔が三つ、歯を出してにこりとした。
気味わる三婆、亀井えり、道重さゆみ、田中れいなの三匹がうやうやしく、
あの魔剣を差し出した。
「妖怪総大将、ピロピロ剣を使うときであります」
紺野さんは魔剣を受け取った。
「べし」
紺野さんが一言、強く言うと、紺野さんの背中にしがみついている、
超古代マヤ人は紺野さんをつれて空中にあがった。
 
503: ソニン  2003/12/21(Sun) 16:13
490
 空中で紺野さんはコピーワルゴジラ松井と対峙している。
ワルゴジラ松井コピーの背中に乗った府下田恭子が紺野さんを見て、せせら笑った。
「ふふふふふ、ここまで、来たのは立派だね、
しかし、お前の目の前にいるのは地上生物最強のワルゴジラ松井のコピーであるうえに、
空中可能のジェット噴射装置まで背中についている、勝てるかな、
このジェット噴射装置付きワルゴジラ松井コピーに、ふははははははははは、妖怪め」
府下田恭子皇后はワルらしく、つばをはいた。
 まみりも高橋愛も石川も、飯田も王警部も新庄芋も、村野先生も、
そして何よりも、空中で紺野さんを支えているのを心配気に、ほーちゃんと
くーちゃんのことを見つめながら、徳光ぶす夫は見つめていた。
「ほーちゃん、くーちゃん」
「あっ、見て、ワルゴジラ松井のコピーが紺野さんのまわりを回り始めている」
「あれは」
「なんですか、はるら先生」
「みんなバターになっちゃった作戦」
「それは」
「インドのハッサムくんが発明した魔法なのよ、ハッサムくんがお母さんの
おつかいで海岸に行くと人食い虎があとをついて来たのよ、そこでハッサムくんは
やしの木の上に登ったのよ、ハッサムくんがやしの木の上で回転すると、
人食い虎もやしの木のまわりを回り始めた。ハッサムくんはどんどん、
スピードを上げてやしの木のまわりを回り始めた。
 
504: ソニン  2003/12/21(Sun) 16:14
491
すると、人食い虎も
そのまわりをすごい速さで回り始めて、気がつくと、人食い虎はバターになってしまったの。
きっと、ワル深田恭子も紺野さんをバターにしようと思っているのだわ」
「あっ、あれを見て、見て、オヤピン」
辻が天を目指して、叫んだ。
空中に浮かんでいる紺野さんの顔がストーブの前に置いたバターのように解けて行く、
小岩さんのように紺野さんの瞼はふさがって、ますます妖怪じみた顔になった。
「あああ、紺野さんはワル深田恭子のワル魔法のためにバターになってしまうの」
不良たちは悲鳴を上げた。それがどんな科学的根拠によってなされているのか、
つんくパパには少しもわからなかった。
 そのときである。妖魔剣聖紺野さんピロピロ剣を抜くと、頭上に掲げた、すると、
天上は光となって輝き、星がまたたいた。そのあまりにも、美しさと
、輝きのために汚れきった石川は目をつぶった。
「あれは」
探偵高橋愛が天をさした。
天上に金剛石が光りとなって、輝き、文字が出来、美しい音楽が鳴り響いた。
天上に光りで
「初恋剣傾城」
という文字が天上すべてを覆い隠すように輝き、紺野さんの向かいには、
紺野さんと同じようにピロピロ剣を頭上に掲げたペンギン(王様ペンギン)が
空中に浮かんでいる。紺野さんもペンギンもお互いのすべてを知り尽くして、
安心仕切ったようにお互いを見つめている。
「あれが、あれが、そうなの」
はるら先生は一生見ることが出来ないと思ったものを見たので目を疑った。
気味の悪い亀井えりが
「初恋剣傾城(ペンギン編)」
そう言うとにやりと笑った。
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****
 
505: ソニン  2003/12/21(Sun) 16:51
492
妖魔剣聖紺野さんとなった紺野さんはいつもピロピロ剣を背中に担いでいた。
そして、いつも、どこに行くのも、妖怪子分百千騎が従っていて、はし、一つ、
持たせないようにしていた。紺野さんはハロハロ学園の中でも浮いた存在だった。
 妖怪子分百千騎たちはいつでも、紺野さんのために命を捨てる覚悟が出来ていた。
 しかし、紺野さんには何か、満たされないものがあった。
今日の給食当番は紺野さんだよと、探偵高橋愛が言ったので、紺野さんは立ち上がると、
すぐに妖怪子分百千騎たちが立ち上がった。紺野さんの代わりに給食のパンもおかずの
入ったばけつも牛乳もすべて持ってくるつもりである。
「べし」
(たまには自分でやる、お前たちは手伝わなくてもいい)
妖怪子分たちはすごく不満そうだったが、紺野さんは背中にピロピロ剣を背負ったまま、
給食室に行くことにした。給食室は廊下を歩いて行き、教室から離れたところにある。
途中で吉澤に出会った。
「あんた、給食当番をやるの、みんな、やりたがらないよ、どうしてかって、行きたくないからよ」
紺野さんはなぜみんなが給食室に行かないのか、わからなかった。
そして給食室に行く薄暗い廊下を歩いた。
無気味な感じがした。
途中で苔の生えた、石の置物のようなものがあった。無気味だった。
人間とも違う、妖怪とも違う、表現の出来ない無気味さだった。紺野さんは、それをよく見た。
石の置物だと思ったのは、動物らしかった。身体中を錆びた鉄の鎖でぐるぐるにされている。
紺野さんが通ったことに気がついた動物は目を上げた。気味の悪い目が、
どんよりとにごった。そしてそのカビの生えた動物の身体はところどころ膿まで、
出ていた。紺野さんはおぞましくって、給食室に駆け込むと、
パンの入ったアルミの箱を受け取ると、そのまま、そのおぞましい動物を見ないようにして、
教室に戻った。その動物はどうやら王様ペンギンらしかった。
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506: ソニン  2003/12/23(Tue) 16:07
493
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 教室に戻ってからも紺野さんはその無気味な呪いの岩みたいな王様ペンギンの姿が記憶の片隅に残った。
 ハロハロ学園でダンス大会が開かれることになった。これは男女がペアになってやるダンスで、
ダンスの技術はともかくも、ふたりの息がぴったりと合うことが、なによりも要求された。
このダンス大会で優勝すればハロハロ学園の学食の素うどん券が一年分もらえるのだった。
まみりの相手はもちろん、ハロハロ学園一のモテモテ男、ゴジラ松井くんである。そして、
悪女石川は騙しのテクニックを存分に使い、一ダースも男をゲットしていた。
しかし、紺野さんには相手がいなかった。
妖怪総大将紺野さんは三葉や筆石の化石が無造作に飾られている、ハロハロ学園の
中庭でぼんやりと自分にダンスの相手もいないことにうつろな気持ちでいると、
お化け蛇の目が姿を現した。
「妖怪総大将、妖怪総大将、なにをこんなところでぼんやりしているんですかい、
さあ、墓場に行って、バーベキューパーティーをやりましょうぜ、それに、フットサルをやるには、
ちょうどよい、頭蓋骨が見つかったんですぜ。妖怪、妖怪」
「べし、べし」
(わらはをひとりにさせろ、妖怪、妖怪)
 
507: ソニン  2003/12/23(Tue) 16:08
494
「へっ」
妖怪蛇の目は霧となって、いなくなった。
(わらはをたまにはひとりにさせろと言っているのに)
古生代中期のシルル期にはじめて地上に進出したという体温調節のための大きな背びれを
持った脊椎動物の化石のうしろに、宇宙放浪者のような格好をした生き物がじっと、こちらを見ていた。
紺野さんはその生き物を見て、すぐに好ましい印象を持った。
紺野さんがじっとその生き物を見ると、その生き物は手を差し伸べて、踊りの格好をした。
「妖怪総大将、わたしは少しは踊りの素養があります、お相手、いたしましょう」
まわりに妖怪子分百千騎がいないことも紺野さんを冒険的な気分にしたのかもしれなかった。
紺野さんは言われたままに立ち上がった。
そして、ふたりの手と手は合わされた。
アンドートゥルウー、アンドゥートゥルー、ふたりは軽やかににステップを踏んだ。
どちらが主導権をとっているといのでもなく、すべては自然に動き、まるで自然の摂理に従って
いるようだった。
紺野さんは人間だったときも、妖魔剣聖になってからも、こんな楽しい思いをしたことはなかった。
その世界には言葉はいらなかった。お互いに目を見合わせるだけで、すべてを分かり合えた。
一曲を踊り終わったとき、そのボロきれをまとった宇宙放浪者は紺野さんの前で頭を下げた。
「妖怪総大将、このような楽しい気分になったことはありません」
 
508: ソニン  2003/12/23(Tue) 16:09
495
「べし、べし」
(わたしもそうである。しかし、そちはなぜ、そのマントを脱がないのか)
「妖怪総大将、今宵の喜びを永久のものにしたい、一存、このマントを脱いだ、
みにくい姿、妖怪総大将の眼をけがらわしたく、ないからでございます」
「べし、べし」
(余計なきづかい、気を遣うでないぞ)
「妖怪総大将がそれほど、おっしゃるなら、おどろかないでくださいませ」
その生き物はそう言うと、その薄汚れたマントを脱ぎ捨てた。
すると、そこには、目を覆いたくなるものが立っていたのである。
紺野さんも何かを言おうとして、出かかった言葉を飲んだ。
そこには王様ペンギンが、それも皮膚病で身体中に吹き出ものが出て、
カビも生え、膿も出でいる。そして、少しだけ、その醜い姿に威厳をそえているのは、
おもちゃの剣のようなものがぶら下がっていた。
「さぞ、妖怪総大将、驚かれたことだと思います」
「べし、べし」
「これには、深いわけがございます。こう見ても、わたしは一国の王子、
そして、わが、腰に下がっているのはピロピロ剣、男物でございます」
紺野さんは自分の背中に背負っている剣に手をやった。紺野さんの背負っているのはピロピロ剣、
女物である。
「この剣こそ、天下無双、ピロピロ剣、女物と合体したとき、この剣をうち負かせるものはありません。
めしべとおしべが合体したとき、果実がなるように、天下の気をすべて集めることが出来るのです」
 
509: ソニン  2003/12/23(Tue) 16:10
496
「べし、べし」
紺野さんは興味をひかれてうなずいた。
「わたくしの父と母は最強の剣法、初恋剣傾城を生み出したのでございます。
わたしの父の名は北極ペンギン天下第一。
小国の王でした。わが祖国に、妖獣松浦あややが攻撃をくわえてきたのです。
父親は刀鍛冶を訪ね歩きました。
妖獣松浦あややを切り倒すためです」
紺野さんは妖怪界に猛威をふるっていると亀井えり婆が言っていた
妖獣の名前が出て来たのでますます興味をひかれた。
「いろいろな剣を探し歩きましたが、そこで美しい娘に出会いました。それがわたしの母です。
刀鍛冶、ピョコタン親父の娘でした。ピョコタン親父はピロピロ剣、男物、
女物の二本の剣を打ち終わると、命脈がとぎれました。そして、母と父は二本の刀をともに持った
剣士となったのです。ふたりはお互いに信頼しあい、愛し合っていました。夫婦琴瑟相和すという
表現がぴったりでした。そして、ふたりは初恋のもの同士でした。
そして初恋剣傾城を生み出しました。妖獣松浦あややがわが国をふたたび襲ったとき、
その剣法であやや獣をうち負かしました。しかし、年月には勝てず、父王も母王も死にました。
ああ、そして、初恋剣傾城剣法はわたしが子供の頃に見たかぎり、
ふたたび見ることは出来ません。ピロピロ剣はその価値も知られず、錆びていくばかりです。
 
510: ソニン  2003/12/23(Tue) 16:11
497
わたしはふたたび、その剣法の復活を誓いました。
そして初恋剣傾城を可能にする相手を捜し求めました。
わたしはこう見えても、もとの姿はペンギンではありませんでした。
美しい王子だったのです。その相手を捜しているうちに、旅の途中で貧乏そうな
中学生に会いました。その中学生か言うことには、僕の姉ちゃんは初恋剣傾城を使えるんだと言います。
わたしはその女のところに行きました。たしかに、その女は美しかったのです。
わたしは剣を差し出しました。
そしてその女も剣を差し出しました。ふたりは剣と剣を合わせました。
すると、目のくらむような、紫色の光があたりに漂い、わたしとその女は空中に
浮かんで行きました。そして、あまりの感情にわたしは気を失ってしまい、気がつくと、
わたしはダイヤやサフィア、ルビー、プラチナ、金だとか、
装身具を身につけていたのですが、それらはみんななくなっていました。
そして、水に映った自分の姿を見ると、みにくく、膿ただれた王様ペンギンに変わっていたのです。
そこへ気味の悪い三人の婆が現れました。わたしたちは気味わる婆、亀井えり、
道重さゆみ、田中れいなだよ、馬鹿たれ、変な女に騙されて、金目のものをみんなとられたね。
 
511: ソニン  2003/12/23(Tue) 16:12
498
ふひょょょょょょ。それはまあ、いい、初恋剣傾城を復活させようなんて、
だいそれた望みを抱いたね。まことの恋いの相手でなければ、
その剣法は復活出来ないよ。おろかもの、それどころか、偽りの相手を剣の相手に
すればピロピロ剣は罰を与える。お前はみにくいペンギンに姿を変えられたんだよ。
そう、ピロピロ剣に、もとの姿に戻りたければ方法はひとつ、
まことの相手に巡り会わなければならない、と言ったのです、もう、二百六十年のあいだ、
まことの相手を捜し求めています」
王様ペンギンはそう言った。
紺野さんはそこでまた、ペンギンとワルツを踊った。紺野さんには
妖怪子分百千騎にも放すことの出来ない秘密が出来た。
ハロハロ学園の馬鹿組に行くと、まみりが机の上にゴジラ松井くんの写真をのせて、
じっと見つめていた。悪女石川は机の上にのらないほど男の写真をのせてあみだくじをしている。
*************************************
*****************
 
512: ゆうか   2007/02/09(Fri) 08:32
伊藤ちゃんへ面白いよ
(・_・)

http://spam.jjjp.jp/top/top3.htm

 
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